池袋中央法律事務所

離婚時の生命保険財産分与

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離婚時の生命保険財産分与

離婚時の生命保険財産分与

2025/07/01

財産分与(生命保険等の取り扱い)

1 はじめに

 本ブログでは、離婚に際しての生命保険などの保険についての財産分与についてどのように取り扱われるのかをご紹介します。

 家庭裁判所では、一般的に、その保険がどのような意図の元に締結され、保険料が支払われてきたのかの経緯についてはほとんど考慮されることがなく、保険契約者が夫または妻であるならば当然に財産分与の対象となると考えられております。

 しかし保険契約を締結するに至った動機や目的は、夫婦の将来のためというよりはお子様の将来のことを考えて契約された場合もあるのであって、契約者が夫または妻であるからといって当然に財産分与の対象として取り扱うことは却って不適切な結果を招くこともあると考えます。

 池袋中央法律事務所では、保険契約の財産分与に当たって、その契約の目的や意図にも着目し、機械的、形式的な処理ではなく、より適切な財産分与が実現できるよう努力をしております。

2 保険契約の財産分与の原則ー解約返戻金に基づく分与 
 
まず生命保険等が財産分与の対象となるときの原則的な処理についてご紹介します。
 財産分与の基本は、離婚を視野に入った状態で別居生活になったときなど夫婦の互いの協力関係を考えることができなくなった時点において(実務では、この時点のことを「基準日」などと呼んでいます。)婚姻生活を通して形成された財産の価値を評価し、原則、夫、妻において2分の1の割合(この割合は法で定められたものではありませんが、実務上、ほとんど2分の1の割合で分与することが当然として扱われています。)で分与するというものです。
 しかし保険については、実際に保険金が支払われる事態になって初めて、財産として現実化するものである一方、かといって保険金が支払われないままの状態においては全く資産価値がないということもできません。そこで実務においては、基準日において保険契約を解約した場合、どれだけの解約返戻金が支払われるのかを確認し、その支払われると見込まれる解約返戻金の金額が保険契約の評価額であると考えることにしております。ということは、解約返戻金が支払われることのない、保険料が掛け捨てになるような保険については財産的価値はないものとされ、財産分与の対象にもなりません。

 もちろん、解約返戻金がいくらであるのかを元に保険の資産価値を算定するといっても、別に実際に保険契約を解約しなければならないということではありません。あくまでも財産分与の分与額を算定するために生命保険等の保険について、解約返戻金がいくらになるのかを確認するということでしかありませんので、その点は誤解をされないようにして下さい。

 

3 財産分与の対象に含めるべきでない生命保険等ー学資保険など
 さて、以上に述べたところによれば、夫婦において契約した生命保険等については解約返戻金が支払われない掛け捨ての保険の場合を除き、基準日における解約返戻金を確認し、その金額に基づいて財産分与がされるということになります。

 しかしながら、全ての保険契約についても一律に同じように取り扱うことは適切ではありません。

 その典型例は、学資保険と呼ばれる保険です。学資保険とは、子どもの進学に伴い、多額の入学金や授業料を親が負担しなければならないことを受けて、子どもの進学に備えた保険です。つまり、確かに保険契約者は親であり、保険料を支払うのも親であるのが通例ですが、学資保険の保険金は子どものために使われるものなのです。つまり子どもの進学とは関係なく、親の都合で学資保険を中途で解約するようなことは本来、考えられないことなのです。

 従って学資保険が支払われる以前の段階で、離婚問題が発生したからといって、解約返戻金を確認し財産分与の対象とすることはできないというべきです。それは子どものための保険金を親が横領してしまうのと何ら変わりありません。

 学資保険については財産分与の対象とはせず、離婚した後に子どもの親権者となる親に必要に応じて保険契約者の名義を変更するということで対処するべきなのです。

 以上と同様に考えるべき保険契約は学資保険に限られません。

 一般の生命保険等であっても、子どもの将来の病気や深刻な怪我等による医療費等に備えた保険もあります。保険契約者は夫または妻になっており、保険料の支払も親が行っていても、その実質は学資保険と何ら変わらず子どものための保険であると考えられます。保険契約者についても子どもが未成年であるがために親の名前で契約したというにすぎず、いずれは子ども自身に契約者を切り替えることが考えられているということも少なくありません。

 このような保険についても、離婚に際しての財産分与の対象とするべきではありません。

 しかししばしば、家庭裁判所においてはそのような保険契約の目的、保険契約を締結した動機について気に留めることなく、夫婦のいずれかが保険契約者となっているのであれば財産分与の対象とするべきであるとして取り扱おうと致します。

 弁護士としてはそのような場合には、お子様の将来に備えるための生命保険等については財産分与の対象に含めるべきではない旨を主張し、適切な財産分与の実現ができるよう働きかけなければならないのです。

 

 

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